大人とカサンドラ症候群とは!?【発達障がい 学習塾】2020/03/16①
㉞大人とカサンドラ症候群
【カサンドラ症候群とは!?】
・カサンドラしょうこうぐん…英語→Cassandra affective disorder
・カサンドラ情動剥奪障害
・カサンドラじょうどうはくだつしょうがい…英語→Cassandra affective deprivation disorder
・アスペルガー症候群の夫または妻(あるいはパートナー)と情緒的な相互関係が築けないために配偶者やパートナーに生じる、身体的・精神的症状を表す言葉である
・アスペルガー症候群の伴侶を持った配偶者は、コミュニケーションがうまくいかず、わかってもらえないことから自信を失ってしまう
・世間的には問題なく見えるアスペルガーの伴侶への不満を口にしても、人々から信じてもらえない
・その葛藤から精神的、身体的苦痛が生じる
・症状としては偏頭痛、体重の増加または減少、自己評価の低下、パニック障害、抑うつ、無気力などがある
・近年、カサンドラ症候群を訴える者のブログも見られ、アスペルガー症候群の伴侶を持つ者の二次障害として問題となっている
・パートナーがアスペルガー症候群の兆候を示すカップルは、日常生活においてさまざまな問題にぶつかる
・そんな人々を支援するための書籍やカウンセリングがますます必要とされ、夫婦間のケアの重要性が指摘されている
・夫との情緒的交流がうまくいかない妻は、何が何だか理由はわからないけれど苦しい、周囲は苦しんでいることを理解してくれないという二重の苦しみの状態にある
・本人が問題の本質がわからないこと、周囲が問題の存在さえ理解してくれないこと、この二つの要素が現在のカサンドラを巡る問題の本質になっている
・カサンドラ症候群について理解を深めることは、決してアスペルガー症候群の人を否定したり差別を助長したりするためではない
・アスペルガー症候群-非アスペルガー症候群夫婦間に生じる問題の原因に向き合い、適切な支援を受け、パートナーのお互いがより良い生き方を模索するために必要なことである
・カサンドラ症候群は妻だけでなく、家族、友人、会社の同僚にも起こるとされている
・カサンドラ症候群を知ることは、アスペルガー症候群の社会的認知度を高める手助けにもなると考えられる
【概要】
・アスペルガー症候群 (AS)は男性が女性の4倍ほど多いため、カサンドラ症候群は妻の病気として書かれることが多い
・アスペルガー症候群が女性である場合は、アスペルガー症候群男性をアスペルガー症候群女性に置き換えて読む必要がある
【「カサンドラ」の名称】
◎語源
・カサンドラというのは、ギリシア神話に登場するトロイの王女の名前である
・太陽神アポロンに愛されたカサンドラは、アポロンから予知能力を授かる
・その能力でアポロンに捨てられる未来を予知したカサンドラは、アポロンの愛を拒絶したので、怒ったアポロンに「カサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけられた
・カサンドラは真実を知って伝えても、人々から決して信じてもらえなかった
◎歴史
・カサンドラの比喩は、心理学、環境保護主義、政治、科学、映画、企業世界、哲学など様々な文脈で使われてきた
・少なくとも1949年には、フランスの心理学者ガストン・バシュラールが「カサンドラ・コンプレックス」の用語を作り出し、以後広まってきた。ただしここでいうカサンドラコンプレックスは発達障害との関連の意味はない
・非アスペルガー症候群の配偶者や家族がアスペルガー症候群の行動の影響を受ける状態は、もともとは「鏡症候群」と言われていた
・これは、1997年にアメリカのFAAAS(アスペルガー症候群の影響を受ける成人の家族の会)が考え出したものである
・特に、診断されていない成人の発達障害の場合に生じるとされる
・非アスペルガー症候群の家族は、常に一緒に生活するアスペルガー症候群が表すペルソナ(外的人格)を、少しずつ長い時間をかけて映し出すようになる
・孤立し、誰からも正当性を認められない
・「鏡症候群」は数年後には「カサンドラ現象」に変更され、2003年にFAAASの会議で「カサンドラ情動障害」として初めて公表された
・最近では「カサンドラ情動剥奪障害」と言われるようになった
・これらの言葉は、非アスペルガー症候群の人が、アスペルガー症候群の人との関係において経験することを示してきた
・彼女たちの多くが、パートナーとの関係において情緒的な相互関係が欠如しているために、身体的・精神的な不安反応を示している
・予言者カサンドラは、真実を知る力を与えられながらも、呪いにより誰からも信じてもらえなかった
・この様子が、アスペルガー症候群と非アスペルガー症候群間の関係の状態を表していると言われる
・彼らは自分たちの関係が典型的なものではないとわかっているが、他の人たちはその関係の真実を受け入れたがらないのである
・なお、「カサンドラ症候群」の名称はアメリカ精神医学会の診断基準に含まれておらず、正式病名ではない
・これらの症状はアスペルガー症候群のパートナーを持ったことにより起こるので、関係性による「障害」であり、病名がつかないため「状態」や「現象」と呼ぶのが現在のところはいいとされる
【症状】
◎カサンドラの状態
・カサンドラ症候群は二次障害である
・人と人との関係における認識の欠如の結果であり、苦痛を訴える当事者はパーソナリティ障害とは異なるが、診断にさいしては慎重な態度を要する
・情緒的な相互関係と愛と所属は、人間の本質的なニーズであり、これらが満たされず、そしてその理由が解らないとなれば、心身の健康は影響を受ける可能性がある
・人間は感情的エネルギーを必要としていて、それは日常生活で幸福を見つけるために欠かせない源である
・アスペルガー症候群との結婚において感情的エネルギーで自分を満たすことは難しい
・支え合うというエネルギーの交換が起こらない
・非アスペルガー症候群女性はエネルギーを差し出すが、アスペルガー症候群のパートナーから受け取るものはほとんどなく、常に消耗する
・カサンドラ症候群は、パートナーのお互いが原因を理解し受け入れることによってのみ、克服あるいは軽減することができる
・女性がアスペルガー症候群の知識を持ち、男性がアスペルガー症候群を自覚していることが前提となる
・お互いの違いを理解し、コミュニケーションや感情表現・愛情の示し方のより良い方法を見つけるために、パートナーの両方がお互いのために勉強して協力するならば、二人の関係はうまくいくことがある
・男性本人も周囲もアスペルガー症候群に気づかないまま大人になっている場合も多く、そのことがカサンドラ症候群の克服を難しいものにしている
【診断基準】
・カサンドラ症候群は次の3つの要素から成る、とされている
◎パートナーの少なくとも一人が、低い心の知能指数/共感指数、あるいはアレキシサイミア(失感情症)
◎人間関係の相互作用や経験を害する
◎精神的および身体的(またはどちらか一方)なマイナスの症状
・具体的には、以下の各カテゴリーに1つ以上該当すること
・少なくともパートナーの一人が次の診断基準の1つ以上に該当する
①低い感情知能
②アレキシサイミア…失感情症
③低い共感指数
④人間関係の面で次の1つ以上に該当する
⑤激しい対立関係
⑥家庭内虐待(精神および身体、またはどちらか一方)
⑦人間関係の満足感の低下
⑧人間関係の質の低下
⑨起こりうる精神的または身体的症状
⑩低い自己尊重
⑪混乱/当惑した感情
⑫怒り、抑うつ、不安の感情
⑬罪悪感
⑭自己喪失
⑯心的外傷後ストレス反応
⑰疲労
⑱不眠症
⑲偏頭痛
⑳体重の増減
㉑PMT;月経前緊張症(婦人科系の問題)
㉒そのほか、カサンドラ症候群の症状として「アスペルガー的行動」が生じる場合もある
【受診】
・妻からの気づきから受診を促す場合は、かえってそれが夫婦の問題になったり、夫が仕事の意欲をなくすこともある
・受診した医療機関が大人の発達障害に詳しくない場合など、診断に至らないことがある。社会的に適応していれば、妻からは特性が認められるのに、診断に至らない場合が少なくない
・受診を促したこと自体を、パートナーが被害的に受けとることもある
・しかし、パートナーの特性で悩んでいるなら、発達障害に詳しい専門機関に相談するのは重要なことである
・妻からの情報で、パートナーにアスペルガー症候群の傾向があると認められ、それが妻の精神的身体的ダメージに繋がっているとしたら、それはカサンドラの状態であると考えられる
・診断がついた場合、非アスペルガー症候群女性は嬉しさを感じる一方で、喪失や怒りを感じるかもしれない
・診断により、二人の関係に多くの問題をもたらしてきた原因が理解でき、安堵を感じる
・しかし、診断がつく前には存在すると思っていた2人の関係は、もはや同じようにそこにはない
・アスペルガー症候群であるパートナーとはこの感情を分かち合えないので、とりわけ孤独に感じることになる
・ また、自分たちは「ごくふつう」の関係を築いていると思っていたのに、そうではなかったと騙されたような気になって怒りを覚えたり、何年も無駄な努力をしてきたのかと失望したりする
【改善のために】
◎離れる
・アスペルガー症候群の人は「一見ちょっと変わっているけどいい人」である
・実際にパートナーに持たなければわからない理不尽さやストレスが、いつしかパートナーの精神に変調をきたしてしまう
・それはやがて、数々の肉体的な症状にも発展していく
・ 改善するには対症療法的に、うつ状態や精神不安を解消する薬を服用する
・あとは、アスペルガー症候群のパートナーと離れるしかない
◎コミュニケーションの方法
・パートナーがコミュニケーション方法を変えるだけでも、関係は変えることができる
・ アスペルガー症候群の夫とカサンドラとの問題は、夫が家庭の中での役割を知らないことや、コミュニケーションの問題だと言える
◎回復過程
・カサンドラの心の回復の第一歩は、まず自分が悪いのではないと気づくことから始まる
・夫がアスペルガー症候群であることが夫婦の問題の原因だと知ることは、症状の改善に役立つ
・ただし、原因が自分ではなく相手であると喜ぶわけではない
・長年の苦悩の理由が、アスペルガー症候群の特性とどのように関連があるのかを丁寧に読み解くことで、夫の不思議な行動の原因が見えてくる
・それが理解されて初めて、その原因が自分ではないことに合理的な確信が持てる